教授挨拶

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医学部学生、初期研修医、若手医師へのメッセージ 一般の方、当事者(ご家族を含む)のみなさまへ

チーム一丸でありながら
多様性のある当科へようこそ

教授 松尾 幸治

チーム一丸でありながら多様性のある当科へようこそ。

この挨拶文は、医学部学生、初期研修医、若手医師向けの挨拶文です。一般の方、精神疾患を患っている患者さん、そのご家族に向けた挨拶は、こちらをクリック

この度は、埼玉医科大学病院神経精神科・心療内科(以下、当科)のホームページをご覧頂きありがとうございます。

当科が目指す若手医師教育のゴールは、「どこにいっても通用するような臨床の腕を身につけた精神科エキスパートを養成すること」です。これは、埼玉医科大学の建学の理念の第1に掲げられている「生命への深い愛情と理解と奉仕に生きるすぐれた実地臨床医家の育成」に通じるものです。

当科の病棟は精神科救急入院料算定病棟および急性期医師配置加算定病棟の2病棟構成で、大学病院としては珍しい超急性期から急性期治療に特化した診療体制をとっています。身体疾患において救命救急センターではあらゆる疾患の救急対応を学ぶことができるのと同様に、当科の精神科救急ではあらゆる精神疾患の救急的介入方法を学ぶことができます。一方、救命救急センターは、救急対応が完了すると、原疾患の内科・外科等に転科しますが、当科では精神科救急病棟は救急対応後も、精神状態が安定して退院できるまでの期間もトータルに治療にあたります。また、当科は県内の精神科医療の最後の砦であることを自覚しており、地域の精神科医療機関では診断や治療が難しい患者さんを積極的に受入れています。入院診療においては、教育にあたる上級医が気分障害、てんかん、老年精神医学、発達障害、小児・児童精神といった幅広い分野の専門性を有していることから、入院患者の症例検討会の際には一症例をさまざまな専門的視点から議論します。若手医師はそういった多角的視点で診療する力を自然と養うことができます。さらには、県内約730万人(令和6年4月1日現在)の人口を抱えるなかで、精神科救急症例でかつ重症の身体合併症を受け入れる県内唯一埼玉県から指定されている医療機関であるため、身体疾患と精神疾患の両方の診療の腕を磨くことのできる科です。また多くの総合病院精神科と同様、他の診療科のメンタル不調の患者さんに対応するコンサルテーション・リエゾン精神科医療も存分に学ぶことができます。ただし、当科の特徴としてこのリエゾン精神科医療は当院のみならず、車で10分程度にある埼玉医科大学国際医療センターの救命救急センターに運ばれたメンタル不調患者への往診も行っており、タイプの異なる2つの救急医療のリエゾン精神科医療を学ぶことができます。

当科の若手医師は、当科がこうした身体疾患・精神疾患合併症例の治療にあたるミッションを自覚しており、その気構えと積極性、誠実さをもって診療をしており、とても頼もしい若手医師ばかりです。このように述べると、慢性の精神疾患患者の診療の勉強ができないのではないかと危惧される方もいるかもしれません。超急性期、急性期患者は、慢性の精神疾患が急激に悪化した症例も経験することができ、病状が落ち着くと、今度は慢性期の患者への病状コントロールのみならず生活支援サービスをいかにしていくかといった慢性期特有の精神科医療を同時に学ぶことができます。

先に述べましたように当科の教育する上級医は各専門分野のエキスパートであり、こうした教育する上級医から教育を受けると、あらゆる精神疾患疾患や病状に対応ができるだけの力がつき、さらに若手医師自身がさらに若手への指導ができるようになると自負しております。専門分野の詳細はそれぞれの紹介コーナーをご覧下さい。

気分障害は、私がこれまで長年専門にしてきた経緯もあり、その診療、研究の経験を若手医師教育に還元し、光トポグラフィー検査を含めた最新の検査や、エビデンスに基づいた合理的薬物療法、反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)、修正型電気けいれん療法(mECT)を含めた多種多様な治療を学ぶことができます。

てんかんは、当科が創設以来、診療・研究を行って参りました。最近はてんかんの診療が行える精神科医が減ってきています。てんかん患者さんの中には精神症状を引き起こす人も少なくなく精神科が関わることが少なくありません。大学病院においても、てんかん診療を本格的に行っている精神科は数えるほどしかなく、調べた限り(2024年4月1日現在)では、大学病院精神科の中で複数のてんかん専門医が在籍し、脳波分野指導医、筋電図・神経伝導分野指導医が在籍しているところは当科以外にはありません。てんかんは脳の解剖や機能を学ぶことのできる数少ない疾患です。てんかん診療ができるようになると、その他の精神疾患においても脳器質的視点を養うことができ、診療の幅が広けることができます。

小児・児童精神医学は、とかく心因的、心理的解釈・支援の比重が大きくなりがちです。それは必ずしも悪いことではないのですが、若手医師が学ぶ場としては今の時代にマッチしているとはいえません。当科では、行動分析、操作的診断、標準的薬物療法さらに認知行動療法を組み合わせ、エビデンスに基づいた世界標準の診断・治療を目指して常にアップデートしています。

老年精神医学については、認知症を中心に高齢うつ病、脳器質性疾患など高齢者医療で遭遇する疾患について老年精神医学専門医による教育を受けることができます。さらに、当院の脳神経内科・脳卒中内科や丸木記念福祉メディカルセンターとの診療連携より、老年期の精神疾患に関して重層的に学ぶことができます。丸木記念福祉メディカルセンターは当科から歩いて5分ほどのところにあり、県指定の認知症疾患センターを有しており、当科の若手医師も診療の勉強に行っています。

豊富な症例経験は、精神科臨床の実力をつけるには必須ですが、研修医・専攻医はそれだけでは不十分です。それに教育に長けた上級医が必要です。ベッド数の多い市中の病院でも多くの症例を経験することはできるでしょう。しかし教育機関である大学病院では学生を含め若手を育てることを一つの使命としており、当科も教育する優れた上級医がおります。学校の勉強を例に取ると、症例経験は問題集のようなものです。問題集を多く解けばそれなりに学力が上がります。ただ、そこに優れた教師が問題の解き方のコツやポイントを丁寧に教えてくれると学習効果は格段に上がることは、これまでの受験勉強等を経験してきたみなさんにはご理解いただけるのではないかと思います。問題集なら間違えても自分にがっかりする程度ですが、臨床では間違えると患者さんの命や人生に取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。そうであるからこそ、優れた教育を行う上級医者が必要なのです。自画自賛となり恐縮ですが、当科は臨床教育に長けた上級医、多方面にわたる専門医を多く抱えており、万全の教育体制を整えていると自負しております。

このように上級医からの臨床教育はもちろんですが、精神科医療は複雑で個別化医療が求められる典型的な診療科です。そのため、チーム医療という視点から多職種から学ぶことも精神科医療の裾野の広さを学ぶのに大変重要です。当科は、複数の精神科認定看護師、精神科専門薬剤師がいるという全国の大学病院の中では稀有な存在であり、多職種の高度な専門家的視点からのアドバイスも受けることができます。さらに、精神保健福祉士、公認心理士、言語聴覚士と多職種で診療にあたっていることから、あらゆる多職種から学びの機会を得ることができます。

若手医師にとっては、精神保健指定医、精神科専門医の資格取得は、重要な目的の一つです。当科は豊富な症例を持ち合わせていることから、当科の担当症例のみで資格申請に十分すぎる症例を経験することができます。資格申請のための症例報告作成についても2重3重に添削し、医局会議でも全員で議論し、資格取得に向けて万全の体制を整えております。

このように述べてくると、仕事量が多く、忙しくて睡眠もとれない毎日で、体力勝負の運動部のような科なのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。決してそうではないことは、一度見学に来ていただければわかると思います。当科にはそうした雰囲気は全くありません。医局では先輩後輩同士が程よい緊張感をもって、言いたいことを言い合って診断・治療について議論しています。これは埼玉医科大学の建学の理念の一つである「師弟同行の学風の育成」にマッチしたものです。多職種も分け隔てなく診療について議論ができる雰囲気があります。多様性を重視し、明るく活発な若手医師もいれば物静かに黙々と臨床を行う若手医師もおり、どんなタイプの医師にとって居心地が悪くならないような医局環境作りをしています。出身大学も多様で本学のみならず5つ以上の関東や地方の国立大学や私立大学出身者がおりますので、学外から来て輪には入れないのではないかといった心配は一切ありません。のんびりしていて楽な科であるとは決して言いませんが、しっかり鍛えた分、どこにいっても通用するような実力がつく教育を実践していきたいと思っています。さらに、現在当科では女性医師が約30%を占め、講師以上の管理的立場の女性医師も約30%(2024年4月1日現在)と、女性が活躍できる職場環境を目指しており、個々の事情に配慮した多様性を重視した業務分担をしています。精神科のエキスパートを育てるのを目標としているのは述べたとおりですが、プライベートも大切にしています。休暇は、夏休みという特定の期間に限ったものではなく、年間を通じて好みに合わせた適当な時期に休暇をとることができるようにしています。よく学びよく遊べと言いますが、プライベートの充実は仕事へのモチベーションの非常に重要なエネルギーと思っています。さらに、若手医師は新しい家庭を持つなど人生において大きな転換点となる時期でもあることから、産休、育児のための時短勤務はもちろんのこと、男性医師にも積極的に育休を取得することを推奨しています。個々人のワークライフバランスの価値を可能な限り実現できるよう配慮した職場環境を作っています。こうした積み重ねにより、多様性のある医師が集まった結果、同質の医師集団とは異なる柔軟性がありつつ強靱な組織力となっていると信じています。

研究についても同様です。難しく、厳しい臨床現場からの臨床疑問を研究にまで昇華できるよう上級医は常に心を配っています。とにかく臨床より医学基礎研究がしたいという方は、当科の性格とは異なるかもしれません。一方当科のみではできない研究は、当院の臨床系および基礎系の研究室の共同研究や他大学の精神科との共同研究を実現しており、可能な限り開放的な研究環境をつくっていっています。また、こうした研究環境の他、大学病院ならでは良さもあり、全国の先生方と知り合い、新たな知識を得る機会が多くあります。例えば、2023年に日本うつ病学会から診療ガイドライン双極症が発表されましたが、このワーキンググループ事務局を当科が担当しました。事務局を担当した若手医師は全国の双極症のエキスパートの先生方の会議に一緒に参加し、エキスパートが診断や治療について濃厚な議論している現場にライブで参加することができました。これは、学会に参加したり、専門書を読んで見聞を広めるという勉強では決して得ることはできず、誰もが経験できることではありません。このような若手医師時代の変えがたい経験が、血や肉になり、将来の一人前の精神科医になったときの優れた臨床能力となって生きてくるものと信じています。

もし、当科に興味を持って下さり、もう少し具体的な話を聞きたい、若手の精神科医から直接話を聞いてみたい、と思う方は、 こちらからお問い合わせください。多様な若手の先生が当科に興味を持っていただけると幸いです。

チーム一丸でありながら多様性のある当科へようこそ。

この挨拶文は、一般の方、精神疾患に罹られている患者さん、そのご家族といった当事者の方に向けた挨拶文です。医学部学生、初期研修医、若手医師向けの挨拶は、こちらをクリック

この度は、埼玉医科大学病院神経精神科・心療内科(以下、当科)のホームページをご覧頂きありがとうございます。

私は、2018年6月より当科に入職し、2019年4月より5代目の診療部長・運営責任者に任命されました。当科は、医師のみならず、看護師(精神科認定看護師)、薬剤師(精神科専門薬剤師)、公認心理士、精神保健福祉士、言語療法士等、多様な職種でそれぞれの質の高い専門的な能力を発揮し、チーム一丸となって診療に当たっており、こうしたスタッフは誇ることのできる私の自慢の一つです。

沿革にありますように、当科の歴史は開学前にまで遡ります。こうした歴史的経緯からも当科は埼玉医科大学病院の中でも重要な位置づけであると自覚しています。以前は精神科病棟で237ベッドを有する大学病院精神科としては大変規模の大きな科でした。しかしながら時代とともに世の中が大学病院精神科に求める役割も変化していきました。当時の当科のメンバーが地域、埼玉県、大学病院において当科がどんな役割が求められているかを真剣に考え、2006年4月より大学病院としては非常に先進的な精神科救急病棟(いわゆる精神科三次救急、スーパー救急)をつくりました。また精神科専門病院では困難だが総合病院だからこそ可能な精神疾患に重篤な身体合併症をもつ患者さんの診療に力を入れるという2つの軸で運営していくことに大きく舵を切りました。それに伴い、病床数も2フロア、78ベッドにサイズダウンし、一人の患者さんに多くの人が関わり集中的な治療やケアを行うことができるようになりました。こうした経緯から当科は全国の大学病院の中でも少し特別な存在になっています。

病棟カンファレンスでは、一人の患者さん対して、どのような医療的サービスを提供するのがベストであるのかを先ほど紹介しました多職種スタッフがそれぞれのプロフェッショナルな立場から意見を出し合い、より良くかつ最短で退院できる集中的な入院治療、さらには退院後の継続的な支援について頻回に話し合います。

当科は、あらゆる疾患や病状に対応できるだけの力量をもっていると自負しておりますが、精神科救急、気分障害、てんかん、児童精神医学、認知症・老年精神医学が当科の5本柱として特徴づけています。私が診療部長に就任した当時の挨拶文では精神科救急、気分障害、てんかんの3本柱にしておりましたが、2021年に児童精神医学、老年精神医学のエキスパートが赴任し、2つ追加しました。

①精神科救急は、超急性期の精神状態でかつ重い身体疾患をもつ患者さんの救急的医療という最も難しい患者さんを受け入れています。身体合併症の精神科救急患者を24時間受け入れる埼玉県から県内唯一に指定されている医療施設として、その気構えと積極性、誠実さをもって診療にあたっています。

②当科は長年てんかんについて診療・研究を行ってきました。最近は全国的にてんかん診療が行える精神科医が減ってきています。てんかん患者さんの中には精神症状を引き起こす人も少なくなく、全国の大学病院でもてんかん診療を本格的に行っている精神科は数えるほどしかありません。その中で、当院のてんかんセンターの重要な役割を持ち、ビデオ脳波計測など専門性の高いてんかん診療を行うばかりでなく、市民公開講座など一般向けのてんかん啓発活動も積極的に行っています。

③気分障害(うつ病・双極症)は、私がこれまで長年専門にしてきた経験、専門的診療の技のほか、光トポグラフィー検査、反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)、修正型電気けいれん療法(mECT)といった様々な最新の診断・治療技術を駆使し、多角的な診療を行っています。日本うつ病学会診療ガイドライン双極症2023の作成に重要な役割を果たしました。

④埼玉県における小児・児童精神医学を専門的に行っている医療機関はごくわずかです。その中で、当科は子どもの自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など発達症を中心とした診療をおこなう中心的な担い手であるばかりでなく、若手医師や公認心理師等への専門教育にも力を入れています。

⑤埼玉県は現時点で県民の平均年齢が全国でかなり若い県に位置していますが、今後急激に高齢化が進み、認知症、高齢うつ病や脳器質を原因とした精神疾患といった老年期特有の精神疾患患者さんが爆発的に増えることが予想されます。そうした事態に備えられるよう老年精神医学の専門外来を開き、さらに以前から地域の高齢者精神科医療の一翼を担っている丸木記念福祉メディカルセンターと密接に連携し、質の高い高齢者向けの精神科医療を展開していきます。

このような気構えで精神科医療を提供していますが、まだ道半ばのところも少なくありません。謙虚な姿勢を忘れず患者さんやそのご家族の声に耳を傾け、一歩一歩積み重ねながら、少しでも質の良い精神科医療が提供できるよう精進して参りたいと思っております。

教室沿革

昭和48年09月撮影 建設中の埼玉医科大学本館。
2019年12月現在の西館(旧・神経精神科センター)はまだありません(※赤矢印)

1972年4月
埼玉医科大学開校
1974年4月
柴田農武夫教授 就任。野口拓郎助教授 就任
1974年10月
野口拓郎 教授昇格
1977年4月
諏訪 望顧問教授 着任
1985年5月
第81回日本精神神経学会総会 開催
1985年6月
埼玉医科大学総合医療センター開設
1985年7月
野口主任教授 逝去
1986年3月
山内俊雄主任教授 着任
1989年4月
山内神経精神科センター長 就任
1989年5月
教室同門会創設
1993年3月
特定機能病院指定
1993年10月
総合医療センター精神科外来診療開始
1993年10月
埼玉県精神科緊急医療事業協力病院の指定
1996年11月
埼玉県精神科救急医療事業病院の指定
2002年9月
第4回アジアオセアニアてんかん学会議/日本てんかん学会第36回大会 開催(軽井沢)
2004年7月
埼玉医科大学かわごえクリニック開設
2005年5月
第101回日本精神神経学会総会 開催(大宮)
2006年4月
豊嶋良一教授 診療科長 就任
2006年4月
かわごえことのこころクリニック開設
2007年4月
埼玉医科大学国際医療センター開設(精神腫瘍科創設、精神科救命救急科創設)
2009年3月
精神科救急入院料算定開始
2014年3月
豊嶋良一教授 診療科長 退任
2014年4月
太田敏男教授 診療科長 就任(平成26年より部長に名称変更)
2018年10月
第38回精神科診断学会 開催(川越)
2019年3月
太田敏男教授 診療部長 退任
2019年4月
松尾幸治教授 診療部長 就任
2022年9月
第30回日本精神科救急学会(さいたま)
2023年1月
第3回日本成人期発達障害臨床医学会(川越)

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